第77号:エンジェル税制が社長の私財を未来資産に変える!

先日、ある金融機関からの紹介で、

地方都市で肥料を製造しているオーナー社長から御相談を受けました。


年商は約3億円。

借入金も約3億円。

年間の借入金返済額は、2,000万円を超えています。


この会社は、現在も私の支援が続いている会社です。

社長から最初に受けた相談は、借入過多による返済原資捻出という問題でした。
社長もメインバンクも、本業のV字回復による返済継続を心より願っておりました。


詳しく調べて参りますと、本業のV字回復を実現し、返済原資を生み出すためには、

二つの課題を解決する必要があることが分かりました。

・①原材料・仕掛品・製品在庫を減少させ、運転資金を改善すること

・②新たなカテゴリーの肥料を製造するため、新技術を導入すること


この二つの取り組みにより、

年商で1億2,000万円、運転資金で3,700万円が改善されることが可視化されました。


そこで、在庫量と製造計画をAIで連動させる仕組みと、

新たなカテゴリーを製造するための技術導入を組み合わせ、

二つの課題を同時に解決する方針を定めました。


そこに必要な資金は、約800万円です。

問題は、この800万円を、どこから出すのかでした。

社長の頭の中には、三つの案がありました。

・①現在経営している会社の経費と内部留保で賄う

・②自ら所有する有価証券や不動産等の私財を換金、又は担保として活用し、役員借入金として会社へ入れる

・③金融機関から新たに借り入れる


皆様なら、どの方法を選ばれますか?

第76号では、一つ目の「会社の経費と内部留保で賄う案」が
オーナー家とファミリービジネスの資産にどのような影響を与えるかについて検証して参りました。


今回のコラムでは、二つ目の「社長の私財を役員借入金として会社へ入れる案」が
オーナー家とファミリービジネスの資産にどのような影響を与えるかについて検証して参ります。

会社が苦しいとき、自らの私財を会社へ入れる。

これは、オーナー社長として、いかにも経営責任を果たされようとしている行動に映ります。

金融機関に迷惑をかけたくない。

社員の雇用を守りたい。

自分の会社なのだから、最後は自分のお金で支えるべき。

そのお気持ちは、私にも十分理解できます。

私の父も、まさにそのような考えのもと経営に当たるオーナー社長の一人でした。
そして、コンサルティングの仕事を行うことになった現在では、
数多くの支援の場で、私の父同様の考えを持たれ、経営にあたられているオーナー社長を目の当りにして参りました。

しかし、私は、ここで一つの原理原則をお伝えします。

オーナー社長の善意と覚悟だけで私財を会社へ注がれてはいけません。

会社へ入れた後、そのお金が、十年後、二十年後、オーナー家とファミリービジネスに
どのような資産として残るのかまで設計することが絶対に必要です。


なぜなら、役員借入金は、会社にとっては借入金ですが、
社長個人にとっては会社に対する貸付金だからです。


役員借入金は、会社の貸借対照表には負債として残り、社長個人の財産目録には債権として残ります。

一見すると、社長個人の800万円が、800万円の貸付金へ変わっただけに見えます。

本当に、そうでしょうか?


会社の業績が回復しなければ、返済時期は見えません。

返済を求めれば、会社の資金繰りを再び悪化させます。

だからといって、返済を待ち続ければ、社長個人が自由に使えるお金を失います。

私は、このように、オーナー社長の私財が、回収時期の見えない役員借入金に固定化し、
オーナー家とファミリービジネスの未来へ循環しなくなる資金の入れ方を、

「私財固定型未来投資」と呼んでいます。


私財固定型未来投資とは、一時的に会社を救うことには役立っても、
社長個人の資金を、使うことも、未来に引き継ぐことも難しい債権へ固定化する投資です。


では、800万円を役員借入金として会社へ入れた場合、社長個人の資産へ、どのような影響が生じるのでしょうか?


まず、貸し付ける行為そのものに、社長個人の節税効果はありません。

それどころか、その800万円は、社長個人が納税した後の800万円ですので、

社長個人は、一旦、納税を済ませた上で、役員借入金を入れるのです。

もちろん、会社が800万円を研究開発支出として損金算入できるという前提では、会社側に法人税等の減少効果が生じる可能性はあります。

しかし、それは会社の収益に対する税効果です。

役員借入金は資産の付け替えにすぎないので、

オーナー家とファミリービジネスに新たな資金は生まれません。

次に、相続への影響です。

役員借入金は、社長個人から見れば、会社に対する貸付金です。

したがって、社長に相続が発生した場合、原則として相続財産に含まれます。

仮に、会社への貸付金800万円が額面どおり評価され、相続税の実効税率を30%と置けば、相続税負担の概算は、800万円×30%=約240万円です。

現金であれば、納税、生活、教育、次の投資に使えます。

ところが、役員借入金は、会社が返済できなければ、相続人が自由に使うことはできません。

固定化された債権でありながら、相続財産として評価される可能性がある。

ここに、役員借入金の恐ろしさがあります。

そこで、エンジェル税制を活かした場合、どのようなことが起こるか考えてみましょう。

第76号に書かせていただきましたとおり、
課税所得2,000万円のオーナー社長が、個人資金800万円を、
当社の経営課題を解決するエンジェル税制認定企業に投資し、優遇措置Aを活用した場合を考えてみます。

この前提では、所得税等の減少が約284万円、翌年の住民税への影響を約80万円と見込み、合計約364万円の効果が生じる試算です。
逆に、役員借入金として会社に800万の資金を入れますと、この約364万円を前払いしたとも言えます。


そこへ、先ほどの相続税負担約240万円が加われば、社長個人とオーナー家に生じる負の影響は、

約364万円+約240万円=約604万円

に達する可能性すらあるのです。


大事なことなので申し上げます。


800万円を会社へ貸した結果、800万円だけが問題になるのではありません。

税金で消えずに済んだ可能性のある約364万円と、相続時に生じ得る約240万円まで含めて考えなければならないのです。


では、有価証券等の譲渡益を活かす場合は、どうでしょうか?


仮に、社長個人に800万円の有価証券等の譲渡益があり、
エンジェル税制認定企業投資し、プレシード・シード特例を活用できるという前提では、

800万円×15.315%=約123万円

の所得税等を非課税とできる計算になります。

役員借入金へ回した場合には、この約123万円の非課税効果を得る機会も失います。

先ほどの相続税負担約240万円を合わせれば、負の影響は約363万円となる可能性があります。

そこで、私は社長へ、別の方法を提案しました。

・自らの影響力の範囲に、実態ある研究開発会社を設立する

・外部資本要件を含む制度要件を満たし、エンジェル税制の確認を受ける

・社長個人が、その認定企業へ800万円を投資する

・認定企業が、AIと新技術の研究開発を行う

・適正な契約等を整えた上で、その研究開発成果を既存の肥料製造会社の在庫削減と新商品開発へ活かす


この方法であれば、優遇措置Aを活かすパターンでは、
約364万円の効果を見込みながら、オーナー家には800万円の認定企業株式が残ります。


プレシード・シード特例を活かすパターンでは、
800万円の譲渡益を投資するという前提で、約123万円を非課税としながら、
オーナー家には800万円の認定企業株式が残ります。


そして、エンジェル税制認定企業には、
AI、新技術、データ、ノウハウ等の研究開発資産が積み上がり、
その成果を既存の肥料製造会社へ活かすことができます。
同様の課題を抱えている別の企業に、そのノウハウ販売すれば更なる利益を生み出します。


ただし、ここでいう「自らの影響力の範囲」とは、
自分の都合で自由にお金を動かせる会社をつくるという意味ではありません。


投資家要件、外部資本要件、設立年数、研究開発、営業損益、確認申請等の制度要件を満たし、実際に御客様の未解決課題を解決する事業を行う会社をつくるという意味です。


順番を絶対に間違えてはいけません。

節税のために会社をつくるのではありません。


既存の会社と同様の課題を抱えた御客様の未解決課題を解決するために、
研究開発会社をつくり、その正しい事業活動にエンジェル税制を活かすのです。


ここまでの三つの方法を整理します。

・①役員借入金は、社長個人の節税効果がなく、800万円が回収時期の見えない債権となる。
一定の前提では、優遇措置Aを使わない機会損失と相続税負担を合わせ、約604万円の負の影響が生じる可能性がある

・②優遇措置Aは、約364万円の効果を見込みながら、オーナー家に800万円の認定企業株式を残せる可能性がある

・③プレシード・シード特例は、800万円の譲渡益を投資する前提で、約123万円を非課税としながら、オーナー家に800万円の認定企業株式を残せる可能性がある


もちろん、株式投資である限り、エンジェル税制認定企業の事業が失敗すれば、ファミリービジネス自体も危うくなりかねません。

会社を救うために私財を入れることが、悪いのではありません。

その私財を、回収時期の見えない役員借入金へ固定化し、
オーナー家とファミリービジネスの未来への寄与について、
設計思想を持たずに投資することに問題があるのです。

同じ800万円であっても、役員借入金として会社へ貸せば、いつ返ってくるか分からない債権となり、相続時には課税対象となる可能性があります。

正しい順番でエンジェル税制認定企業へ投資すれば、
節税効果を得ながら、オーナー家には株式を、事業には研究開発資産を残せる可能性があります。

今回のコラムでは、オーナー社長が私財を会社へ入れる前に、
役員借入金として固定すべきか、次世代へ承継できる未来資産へ組み替えるべきかを
考える機会を持たせていただきました。


次回は、肥料製造工場の社長が考えた三つ目の案、
金融機関から800万円を新たに借り入れるという方法について検証して参ります。


金利だけを見れば小さく見える借入が、
年間2,000万円を超える返済を抱える肥料製造工場の未来に、どのような影響を与えるのでしょうか。

具体的数字を用いて、お伝えさせていただきます。


なお、本稿の税額は、AIの試算に基づき、一定の前提を置いた概算となります。
実際の適用可否と税額は、会社・投資家・投資時期・所得構成・相続財産の状況・貸付金の回収可能性等によって異なります。

実行時には、必ず税理士等の専門家へ御確認ください。


なお、利益循環型エンジェル投資、株式会社maximumの取り組み、

エンジェル税制を活用した永続不滅のファミリービジネス構築について詳しく知りたい方は、株式会社maximumまでお問い合わせください。

https://www.mku-consulting.com/maximuminc/

一人でも多くのオーナー社長が、会社を救うために差し出してきた私財を、
オーナー家とファミリービジネスの未来を拓く未来資産へと正しく組み替え、

世代を超えた事業課題解決の萌芽を持ち続けることで永続不滅のファミリービジネスを築かれますよう。

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