第81号:永続不滅のファミリービジネス群を守る最強の資産運用!海外不動産節税の罠編

「不動産を買えば、損益通算で税金を減らせます。」

今でも、大手の資産コンサルタントが、当たり前のようにこう語っています。
この”常識”を、そのまま信じて、海外の中古不動産に手を伸ばした社長も、貴社の周りに少なくないのではないでしょうか。

そもそも、損益通算とは何でしょうか。
ある所得で出た赤字を、給与所得など他の所得の黒字にぶつけて、税金の計算のもとになる所得そのものを圧縮する、国税の仕組みです。
言い換えれば、この種の提案の正体は、いらないものを買わせ、それを何年もかけて分割して償却させる、それだけの仕組みです。

今でもYouTube等の動画で、大手の資産コンサルタントが「不動産を買えば損益通算ができる、だからアメリカの不動産がおすすめです」と語っているのを、目にすることがあります。
その仕組みはこうです。
国外の中古住宅を購入し、法定耐用年数を大きく超えた資産に適用できる簡便法を使うことで、建物の取得価額を4年程度でほぼ全額償却します。
多額の減価償却費を計上し、不動産所得の赤字を、給与所得など他の所得と損益通算することで、所得税を大幅に圧縮する、というものです。

しかし、2020年度税制改正により、2021年分以後の所得税について、国外中古建物から生じる不動産所得の損失のうち、減価償却費に相当する部分は「生じなかったもの」とみなされることになりました。
損益通算による節税効果は、法改正によって事実上、封じられています。

この改正の背景を冷静に見れば、このスキームが、そもそも「儲かる」ものではなかったことがわかります。
減価償却を前倒しで計上しているだけであり、将来、物件を売却する際には、その分、譲渡益が大きく計算されます。
つまり、税金を減らしているのではなく、税金の支払いを先送りしているに過ぎないのです。

しかし、この改正が無かったとしても、この提案には、もっと根本的な欠陥があります。
海外不動産を勧める業者は、今の世の中が、このままずっと続くという前提に立っています。
為替も、利回りも、あらゆる数字は、今の情勢を前提にしているに過ぎません。

5年後、世の中がどう変わっているか、誰にも分かりません。
5年後には、業者と連絡すら取れなくなっているかもしれない。
担当者は、とうに変わっているかもしれない。
そして、5年後に、その物件が売れる保証など、どこにもありません。

確実なのは、いらないものをわざわざ買い、今の資金を消耗するという一点だけです。
長期のリターンは、誰にも設計できません。
結局は、税金を先送りしているだけの、同じことなのです。
何も得をしていません。
それどころか、リスクだけを、こちらが一人で背負うことになるのです。

このリスクにすら気づかせないほど、購入するときの「欲」は、すべてを見えなくします。
そこには、新興宗教のような魔力があります。
気分をハイにさせ、情報を隔離し、冷静な判断をさせないまま契約させる。
プライベートバンカーの手口と、まったく同じ構造です。

にもかかわらず、制度が変わって4年以上経った今でも、この説明を載せた動画が新しく作られ続けています。
古い動画が消されずに残っているだけではないのです。
制度が変わったことを知らないのか、知っていて黙っているのか。
いずれにせよ、あの動画は、そろそろ止めなければならないと、私は思います。

資産コンサルタントは、看板を掛け替えるだけで、同じロジックを繰り返します。
最近では、REITへの投資を勧めてくる信託会社もあると聞きます。

なぜ、こうしたことが繰り返されるのでしょうか。
答えは単純です。
国税が絡む制度は、緊縮財政が続く限り、これから先も一貫して厳しくなっていく方向にしかありません。
今まで大丈夫だったものが、次々に禁止されていくだけなのです。

ところで、皆様は「エンジェル税制」という制度を、ご存知でしょうか。
エンジェル税制とは、個人投資家が、経済産業省の定める要件を満たしたスタートアップ企業(エンジェル税制認定企業)に投資した場合に、所得税や、株式の譲渡益にかかる税金が軽減される、国の制度です。
投資した金額をその年の所得から控除できる仕組みや、将来、株式を売却して得た利益そのものが非課税になる仕組みなどがあり、要件を満たせば、法律に基づいて確実に税制優遇を受けられます。

これに対して、エンジェル税制の優遇措置Aと比べると、この違いはより鮮明になります。
優遇措置Aは、投資額をその年の所得から控除できる制度です。
控除の対象になっているのは、これから成長しようとする企業への、本物の投資です。
事業が育てば、そこから後にプラスが生まれる可能性があります。

一方、海外不動産の損益通算は、いらないものを買い、無理やり損を作り出しているだけです。
そこには、育つものが何もありません。

本物の投資から生まれるプラスと、作られた損失。
トータルで見れば、両者はまったくの別物なのです。

プレシード・シード特例など、一定の要件を満たす投資に至っては、売却益そのものが非課税となります。
税金のタイミングを動かしているだけの海外不動産スキームとは、そもそもの構造が根本的に異なります。

しかも、経産省が「第二、第三のアマゾン・テスラ」を生み出すという成長戦略の中で、この制度は年々拡充されています。
令和7年度税制改正でも、再投資期間の延長など、さらに使いやすくなる方向での見直しが行われました。

国税が締め付ける制度に頼り続けるのか、国が育てようとしている制度に乗るのか。

もう一点。
この手の海外不動産節税の提案は、決して怪しげな業者だけが行っているわけではありません。
今も、業界最大手クラスの資産コンサルティング会社が、大々的にセミナーや動画を通じて、こうした提案を続けています。

看板が大きいから安心、有名な会社が言っているから間違いない、という思い込みが判断を鈍らせます。
しかし、どれほど看板が大きくても、その提案の根拠が「国の制度の隙間」に依存している限り、いずれその隙間は塞がれます。
看板の大きさと、制度としての確実性は、全く別の話なのです。

海外の中古不動産は、税金を先送りするだけで、その不動産自体が、本業の事業領域を広げてくれることはありません。
これに対し、自ら関与し、経営を主導するエンジェル税制認定企業をグループの中に持てば、話はまったく違います。
その企業が行う研究開発は、既存の本業に還元され、グループそのものの事業領域を広げていきます。

エンジェル税制は、オーナー社長個人の資産を膨らませるだけの制度ではありません。
正しく活用すれば、ファミリーの資産と、ファミリービジネスそのものの両方を、同時に膨らませることができる、稀有な制度なのです。

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