「決算の前に、航空機や船舶に出資しておけば、今期の税金がぐっと減りますよ。」
利益が大きく出た年、オーナー社長のもとには、こうした話がよく持ち込まれます。
オペレーティングリースというスキームを、ご存じでしょうか。
初めて耳にされる方のために、まず仕組みからご説明いたします。
まず、会社が、航空機や船舶といった大型の資産を持つため、特別に設けられた会社に出資します。
その特別に設けられた会社は、出資金と銀行からの借入れで、航空機や船舶などを購入します。
そして、航空会社や海運会社に貸し出し、毎月のリース料を受け取ります。
一般的に、会社が資産を購入したときには、一度に費用化せず、税務署に事前に登録した方法で何年かに分けて少しずつ費用にしていきます。
これを、減価償却と言います。
ただ、このスキームでは、購入してから最初の数年に、費用が大きく出るように組み立てられています。
すると、この特別な会社は、帳簿の上で大きな赤字になります。
その赤字が、出資の割合に応じて、出資した会社に配られます。
出資した会社は、配られた赤字を自社の利益と差し引けます。
そこで、その年の法人税を減らすことができるのです。
そして6年、7年たってリースの期間が終わると、航空機などを売却します。
そこで、出資した会社にお金が戻ってきます。
つまり、「最初に大きな損を出して税金を減らし、何年か後にお金を取り戻す」というスキームです。
このスキーム、一見、儲かりそうに思えるかもしれません。
ところが、本当にうたい文句どおり、このスキームで資産が増えるのでしょうか。
答えは否です。
実は、このスキームには、すべてを失いかねない二つの落とし穴があります。
一つ目は、何年か後に戻るという約束が、当てにならないことです。
コロナ禍の2020年には、ベトナム航空にエアバスA350を貸していた日本の特別な会社2社が、リース料の値下げに応じました。
2社は2021年12月17日、米国の連邦破産法11条を申請しました。
負債は2社で約350億円と、東京商工リサーチが2022年1月に報じています。
このスキームの致命的なリスク要因として、いつ、いくらでお金が戻るのかを、出資した会社は自分で決められないのです。
二つ目は、うまくいったとしても、戻ってくるのは出資した額に少し上乗せされた程度だということです。
その間、会社は自ら損を出し、利益だけでなく自らの価値を落としています。
「株価対策で利益を減らす会社は10年遅れをとる」私はそう考えます。
ところで、エンジェル税制というものを、ご存じですか。
初めて耳にされる方のために、ご説明いたします。
エンジェル税制とは、エンジェル税制の認可を取った会社に出資した投資家への優遇措置として、お金を出した個人投資家の所得税を、国が軽くする制度です。
この制度が、オペレーティングリースの二つの落とし穴を、うまく克服しているのです。
一つ目の落とし穴は、いつ、いくらでお金が戻るのかを、自分で決められないことでした。
エンジェル税制認定企業は、自社が関与して、自社の発展に寄与する研究開発や人材開発の推進を目的に立ち上げる会社です。
認定企業は、オーナー家が自ら株式を持ち、自ら育てる会社です。
どう育て、いつ次の世代に渡すのかを、他人ではなく自分たちで決められます。
二つ目は、戻ってくるのが出資した額に少し上乗せされた程度で、その間に自らの価値を落としてしまうことでした。
エンジェル税制では、株式を買った時点で税制優遇を受けられ、出したお金は研究開発の資産として残り、育つほど値打ちが積み上がります。
では、オペレーティングリースに出すはずだった同じお金を、どう回せばよいのでしょうか。
まず、会社は、そのお金を、オーナー家の役員報酬として払います。
次に、オーナー家は、受け取った役員報酬で、認定企業の株式を買います。
すると、株式を買った後継者の所得税が軽くなります。
そこで、後継者は、軽くなった税金の分も含めた資金で、先代から本体の会社の株式を買います。
先代は、株式を売って得たもうけで、税制優遇を受けます。
そして、受けた節税の分を、本体の株式以外の財産として、ほかのご家族に分ける原資に充てます。
こうして、お家騒動のない事業承継につながるのです。
自分たちの研究開発に使ったお金は、会社という意味のファミリービジネスも、一族という意味のビジネスファミリーも、ともに豊かにします。
ここまでお読みになり、エンジェル税制に興味を持たれた方も多いと思います。
私どもは、エンジェル税制認定企業を活かし、永続不滅のファミリービジネスと永続不滅のビジネスファミリーをつくるコンサルティングを行っています。
貴社のどの事業を切り出し、誰に託し、誰の報酬から出資するのか。その設計こそが、私のコンサルティングの中心です。
次回は、演算装置投資を勧めた会社が、なぜ2025年最大規模の倒産に至ったのかについて述べて参ります。
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