「AIサーバー(GPU)投資」という節税スキームを、ご存じでしょうか。
「サーバー(演算装置)を買えば初年度で全額経費になり、毎月運用益も入って、最後は当社が買い戻します。」
突発的な利益が出た年の決算前、オーナー社長のもとにはこのような魅力的な投資話が持ち込まれることがあります。
AI関連産業の急成長を目にすれば、「AIサーバーなら将来性がある」「節税しながら運用収入まで得られる」と期待するのも無理はありません。
しかし、AI市場が成長していることと、目の前の投資商品で利益が出ることは別問題です。「全額経費」という営業トークだけで投資を決めれば、税負担の軽減どころか、大切な手元資金を失いかねません。
では、経営者は何を見極め、どこに資金を投じるべきなのでしょうか。
負債総額1,445億円。高利回りと買い戻しをうたうスキームが破綻した理由
その判断材料になるのが、株式会社ドローンネットの破綻です。同社は2025年12月17日に破産を申請し、翌18日に破産手続開始決定を受けました。東京商工リサーチによると、負債総額は約1,445億円にのぼります。
同社はもともと小型ドローンを節税需要に向けて販売していましたが、税制変更などで需要が停滞すると、暗号資産を採掘する「マイニング装置」へ事業を広げました。
ここで区別すべきなのは、同社が主に扱った暗号資産のマイニング装置と、AIの計算処理に使われるGPUサーバーは、用途も収益源も異なるという点です。一方で、AIなど成長分野のイメージを背景に、装置の購入、運用収入、買い戻しをひとまとめにして売り込まれる投資話では、「利益は何から生まれるのか」「誰が、どの資金で買い戻すのか」を確かめる必要があります。
私自身も2024年秋、この種の演算装置投資の契約書を目にしました。「450万円の装置を購入して貸すと、4か月で購入額の4割を超える金額が戻る」という不自然な組み立てでした。「2年で2.2倍」という触れ込みだった商品が、やがて「10か月で1.6倍」という商品へと変わっていったのです。
装置を稼働させるだけで、それほどの収益を継続的に生み出せるのでしょうか。販売会社の資金繰りが行き詰まり、買い戻しの約束を果たせなくなれば、投資した資金は戻らず、高額な装置だけが残る可能性があります。
AI時代の不安につけ込む金融商品より、「自社の強み」への投資を
既存事業の陳腐化やAIの台頭など、先行きの見えない不安から「何か新しい投資をしなければ」「とりあえず目先の利益を圧縮したい」と焦る経営者ほど、こうした外部スキームに足元をすくわれます。
生成AIは、事務処理や情報整理をはじめとするホワイトカラー業務を変え、これまで利益を生んでいた商品やサービスの競争条件も変えつつあります。AIによって価値が薄れる仕事もあれば、AIを活用することで新たな収益機会が生まれる事業もあります。
だからこそ、AIという旬の言葉が付いた投資商品を買うことと、AI時代に自社の競争力を高めることを混同してはなりません。
経営者が目指すべきは、外部の高利回り商品に資金を流出させることではなく、自社を儲けさせてくださるお客様が評価している「自社自身の強み(キラー経営資源)」に再投資することです。
顧客が自社を選ぶ理由を突き詰め、その強みをAI時代にも通用する商品開発、人材育成、新規事業へと発展させる。これこそが、将来の利益を守るための投資判断です。
エンジェル税制で、オーナー個人の資金を「未来の事業資産」へ
自社の強みをさらに磨き、将来の柱となる研究開発や新規事業を、自社グループの「別会社」として立ち上げる。その際に活用を検討できる制度の一つが、エンジェル税制です。
ここで、会社が設備を購入して経費に計上する話と、オーナー個人が新会社に出資して所得税の優遇を受ける話は、分けて考える必要があります。
エンジェル税制は、一定の要件を満たすベンチャー企業への個人出資について、所得税の優遇を認める制度です。ただし、別会社を設立して出資すれば必ず使えるわけではありません。対象企業の要件に加え、投資家の持株割合や同族株主に関する要件など、個別の確認が必要です。
重要なのは、節税のためだけに会社を増やすことではありません。自社のお客様が評価する「キラー経営資源」を起点に、誰が新事業を担い、どんな価値を生み、どのような資本構成で育てていくかを設計することです。
外部の販売会社が提示する高利回りや買い戻しの約束に依存するのではなく、事業の中身を自分たちで把握し、経営判断によって育てていく。税制の活用可能性は、その成長戦略と併せて検討すべきものです。
MKUが支援するのは、AI時代を生き抜くための「多角化ロードマップ」
MKUコンサルティングでは、まず貴社のお客様が何を評価しているかを分析し、成長の核となる「キラー経営資源」を明らかにします。そのうえで、AIによる市場環境の変化も見据えながら、どの事業を切り出し、どの人材に託し、どのような新会社・事業計画・資本構成を組み立てるかという「多角化ロードマップ」の設計を支援しています。
エンジェル税制の利用を検討する場合には、対象企業と個人投資家の要件を確認し、必要に応じて税務専門家とも連携しながら、成長投資と税務上の優遇措置を結びつける方法を探ります。
なお、当社代表の北島が代表取締役を務める株式会社maximumは、2026年10月にエンジェル税制の優遇措置A・Bに関する事前確認を受けています。これは企業側の要件についての事前確認であり、個々の投資家への適用が確定したことを意味するものではありません。
AI時代の変化を恐れて目先の投資商品に飛びつくのか。それとも、自社の強みを次の収益の柱に育てるのか。将来の利益を左右するのは、この資金の使い道です。
自社の存立基盤にお金を投じ、持続可能なグループ経営を築きたいとお考えのオーナー社長は、ぜひ一度ご相談ください。
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