第86号:「毎年110万円ずつ贈与」の暦年贈与|880万円減るはずの相続税が80万円に、神のみぞ知る落とし穴と即座に効く節税

「毎年110万円ずつ贈与していけば、相続税は着実に減らせます。」
長い間、相続対策の常識として語られてきた言葉です。
このコラムをお読みのオーナー社長ご自身も、お子様やお孫様に、毎年110万円ずつの贈与を続けていらっしゃるかもしれません。

このように毎年110万円以内で贈与していく制度を暦年贈与というのですが、この制度、ご存じでしょうか。
1年間にもらった額から110万円を差し引けるので、毎年110万円以内なら贈与税をかけずに財産を移せます。
つまり、暦年贈与の目的は、ただ一つ、相続税を減らすことにあります。
毎年110万円という分かりやすい枠で、贈与税をかけずに財産を移せると聞けば、着実な相続対策に見えるのも、もっともなことです。
ただ、毎年110万円を移せることと、最後に相続税がどれだけ減るかとは、別の話です。
それでは、本当にどれだけ相続税を減らせるのでしょうか。

10年で2,200万円を贈与すると、相続税は880万円減る計算

たとえば、財産3億円のオーナー社長に、お子様が2人いらっしゃるとします。
基礎控除の3,000万円+600万円×2人=4,200万円を引いた2億5,800万円を、2人で分けますと1人1億2,900万円です。
税法で定められた税率40%をかけて1,700万円を引きますと、1人3,460万円、2人で相続税はおよそ6,920万円です。
そこで、110万円×2人×10年で2,200万円を贈与しますと、同じ計算で相続税は6,040万円となり、880万円減る計算です。

足し戻しの期間が3年から7年に、減る額は344万円、80万円へ

ところが、亡くなる前の一定の期間の贈与は、110万円以内の分も含めて相続財産に足し戻して相続税を計算します。
これを「持ち戻し」と言います。
令和5年度の税制改正で、この期間が3年から7年に延び、令和6年1月1日以後の贈与から当てはめられています。
持ち戻しは、相続で財産を受け取る方が、亡くなる直前の贈与で相続税を逃れることを防ぐための仕組みです。
そのため、相続や遺言、生命保険金などで財産を受け取らないお孫様への贈与は、足し戻しの対象になりません。
10年贈与を続けた直後に相続が起きますと、亡くなる前の3年分の660万円は全額が足し戻されます。
改正で加わった4年前から7年前までの4年分は、880万円です。
この4年分は1人100万円まで足し戻さなくてよいので、2人分200万円を引いた680万円が足し戻されます。
合わせて1,340万円が戻され、相続税はおよそ6,576万円となり、減る額は、880万円からおよそ344万円へと縮んでしまいます。
さらに、贈与を始めて5年で相続が起きますと、1,100万円のうち900万円が足し戻され、手元から離れたままになるのは200万円だけです。
相続税は6,840万円となり、減るのは、6,920万円−6,840万円で、わずか80万円ほどにすぎません。

しかも、同じ改正で、贈与した財産を相続のときにまとめて精算する、もう一つの制度にも、持ち戻しのない毎年110万円の基礎控除が設けられました。
この制度を、相続時精算課税と言います。
そのため、お子様への暦年贈与は、その意味をほとんど失ったといえます。

効き目は、何年生きられるかに委ねられている

実は、暦年贈与には、目的そのものを揺るがす落とし穴があります。
それは、効き目が、渡す方がこの先何年生きられるかという、神のみぞ知るものに委ねられていることです。
「7年以内に相続が起きませんように」と願いながら、ちまちまと財産を移していく。
経営者が、一族の税の行方だけは、誰にも読めないものに委ねてしまってよいのでしょうか。

購入したその年に即座に効く優遇措置A

では、一族の税の行方を、誰にも読めないものに委ねないためには、どうすればよいのでしょうか。
それは、7年という年数を数えながら、ちまちまと財産を移していくことではありません。
お客様が貴社のどこを好きで選んでくださるのかを突き詰め、その強みを磨く事業を、後継者が株式を持つ会社として育てることなのです。
その会社の株式を購入しますと、その年のうちに国が所得税を軽くしてくれる制度があります。
それが、エンジェル税制です。
エンジェル税制とは、都道府県の認可を受けた会社の株式を取得した個人の所得税を、国が軽くする制度です。
この制度は、税を減らしたいという同じ目的を、はるかに大きく、はるかに確実に叶えられるのです。

その中でも、優遇措置Aは、エンジェル税制認定企業の株式を購入した額を、1年に800万円まで、その年の所得から差し引ける仕組みです。
たとえば、課税所得4,500万円のオーナー社長が、毎年800万円分を購入しますと、所得税は1年でおよそ352万円、10年でおよそ3,520万円軽くなります。
暦年贈与の880万円と比べ、およそ4倍の差です。
まさに、知っているだけで、毎年何百万円もの得を積み重ねられる制度なのです。

しかも、優遇措置Aの節税は、購入したその年に、即座に効きます。
何年生きられるかを考える必要もなく、即断即決で購入すれば、即座に効果が得られるのです。
いつ、いくら購入するかも、オーナー社長ご自身が決められます。
つまり、税を減らせるかどうかを、ご自身の手に握ることができるのです。
そのうえ、財産は手放すことなく、育っていく会社の株式として、オーナー家に残ります。
その会社とは、お客様が貴社を選んでくださる理由、すなわちキラー経営資源を生かして、新しい事業の芽を育てる会社です。

神のみぞ知るものに委ねる暦年贈与と、ご自身の手で節税の時期と額を決められる優遇措置A。
同じ目的でありながら、その違いは、まさに天と地なのです。

ここまでお読みになり、エンジェル税制に興味を持たれた方も多いと思います。
私どもMKUコンサルティングは、エンジェル税制を、エンジェル投資とエンジェル起業の両側面から生かし、貴社の成長の源となる新しい事業の芽を、グループの中で生み、育てていくお手伝いをしています。
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